2010年06月18日

ゲスト教授・一倉 宏/ことばの快感

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ある日の昼下がり、赤坂にある一倉広告制作所を訪れた。
デスク前のおおきくて、やわらかい光がきもちいい。

今回のゲスト教授は、コピーライターの一倉 宏さんだ。

先日読んだ、ある日の一倉さんのブログに、

『10才の頃はクルマが好きだった。 15才の頃は宇宙が好きだった。 18才の頃は詩が好きだった。 けれどそれよりも女の子が好きになった。 こう書けば私というものをほぼ言い当てている気がする.....』

と書かれてあった。

そう書かれれば、なんとなく一倉さんがどんな方かわかるような気もするが ... よし、その辺りを聞いてみよう。

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子どもの頃はどんなお子さんだったのですか。

背が小さくて運動があまり得意ではなかったですね。でも、普通に子どもっぽい、やんちゃな遊びはしていたけど。わりと凝り性というか、何かにはまりだすと、どんどんその世界に入っていって、果てしなく妄想が広がっていくような子どもでした。

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ブログの中で書かれてましたが、車、宇宙、詩へと興味の中心が変わっていかれたのってどういう流れだったんでしょう。

まあ、男の子なら小学生が車が好きなのは普通かもしれないよね。で、宇宙はそうだな、子どもの頃に宇宙の本、図鑑みたいなものを読んで、宇宙ってどうなってるんだろう?ってね、自然に興味をもちはじめました。中学の時に天体望遠鏡を手に入れたんだけど、そんな事からもいろいろと想像力が広がっていってね。宇宙には果てがないとか、天の河っていうのは沢山ある銀河のひとつで、地球ってその中の小さい星くずみたいなもものにすぎないって、ものすごく刺激的じゃないですか。宇宙へは本当に果てしない感動がありましたね。

そして高校生になって、どういうきっかけだったのかは分からないのだけど、「詩」というものを読むようになったんです。そのときの感動っていうのは、宇宙への感動と似ているんですね。今思うと「詩」というものを体験して、宇宙に似た、ぞくぞくするような快感と、底なしの恐怖感のような感覚を味わった記憶がありますね。

特に影響をうけた作家さんっておられますか。

そうだね、最初に衝撃を受けたのは、谷川俊太郎さんかもしれないね。谷川さんのデビュー作は「二十億光年の孤独」っていうんだけど、感動しましたね。谷川さんも車や宇宙が好きな少年だったらしいですね。

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本棚には難しそうな本がたくさん並んでいる。

ことばが持つ「ちから」って、一倉さんはどういうふうに考えてられるのでしょう。

そうね、まず、ことばにしてもそうだけど、音楽や絵にしても、瀬尾さんのように写真にしてもね、1つのコミュニケーションの道具ですよね。

例えば、音楽っていうのは、作るのは難しいけれど、聴き手として誰でも感動を体験しやすい分野ではないかと思うんです。絵や写真なんかもそうかもしれませんね。

でも「ことば」となると、音楽や視覚芸術に比べて、「ことば」そのものに感動する機会って少ないかもしれない。小説などのストーリーは別として。日本人は、詩ってほとんど読まないし。使う、作るって事からいうと、ことばは絵画のように絵筆を使わなくても表現できるし、写真のようにカメラなくても表現できるものだから簡単なんだけど、簡単なだけに一番使われていない道具というか、そんな気がしますね。だけど、ことばが持つちからっていうのは音楽や視覚芸術に負けないくらい、人に感動をあたえるちからを持っていると思っています。

僕が思う「ことば系」としての最大の表現者っていうのは、シンガーソングライターだと思うんです。本当は自分に音楽の才能があればシンガーソングライターになって伝えたいというのがあるんですけどね。ライブなんかでね、自分の発したメッセージが人に伝わっているかどうか分かるし、何よりも感動っていうものを他の人と一緒に体験できるっていうのは本当にすごいなと思いますよね。僕のような物書きっていうのは、なかなかそのライブな感動を共有しにくいですからね。

なるほど、一倉さんの憧れの存在っていうのは、シンガーソングライターなんですね。

そうね。誰かに夢は、ってきかれたら、武道館ライブってね。あそこは表現者にとっては最高の舞台なような気がするけどね。

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ギターにレコード。シンガーソングライターが憧れだという一倉さんの夢がつまっている。

「きれいなおねえさんは、好きですか。」という、誰もがみんなが知っているこのコピーも、「やはり何より女の子が好きだった」という、一倉さんの少年ごころが現れているんでしょうか。僕はそのコピーを耳にしていたのは、ちょうど思春期の時でしたが、ほんと素直にその問いかけに対して、「はい、すきです」と心のなかで返事してました。

普通は女性の美しさをいう言葉は同世代目線だったり恋人目線だったりでいろいろあるのだけど、あの時はもっと広い視野でみてみようと思ったんです。

いろいろ考えてみてね、きれいなおねえさんって誰でも好きなのではないかなと思ったんですよ。幼稚園の子どもでも好きだし、おじさんたちも勿論好きだしね。女性に対してもとても共感しやすい言葉だなって。僕もそうだけど、多くの人にとって、きれいなおねえさんって憧れの存在だと思いますよ。

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斉藤和義のCD集がずらり。僕は一倉さんの作詞した斉藤和義の「ウェディングソング」が好きだ。ホント、心にじわっとくる。

今の若者のことばの扱い方ってどういうふうにみられていますか。

昔から、若者がことばをカジュアルにしてゆく傾向はあるから、違和感を感じたりはしないけどね。僕らの世代もやっていたしね。でも今のことばの使い方で大きな点でいうと、ことばのコミュニケーションがメール中心になってきているところですね。それってどうなのかなっていうのは最近思います。

メールってすごく情報量が少ないと思うんですよね。ついあたり障りにない表現になって、感情とか背景にある気持ちとかが伝わりにくい。

直接会って話せば表情がみえるじゃないですか。雰囲気で相手とも対話できるし、こうきたからこう返すみたいなね。電話でもそうですよね。顔はみえないけど息づかいや言葉を発するタイミングであったり何かと相手の事が分かりやすいですよね。

そういう意味では、今のメールのやり取りは確かに便利な方法だとは思うんだけど、友達や恋人との間はなかなか深まらないんじゃないかなと思いますね。誤解もあるかもしれないし、本心が分かりにくいというか。だから今の若者のメール中心のコミュニケーションには少し心配するところではあります。

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一倉さんのペット、亀吉くん。

ちょっと話は変わりますが、一倉さんが最近見た、美しいな、と思う景色ってありますか。

最近ねえ、仕事での移動しかしてないからなあ。いつのってことはないんだけど東京でも時々、空が凄くきれいなときがあって、星座がみえるんだけどそんな時は感動しますね。東京で星座がみえるって嬉しいかな。

最後に、一倉さんがやっていきたい事、挑戦してみたい事などあれば教えていただけませんか。

ことばでこの先なにができるだろうっていうのが楽しみですね。何か新しいことができればいいなっていつも思います。例えば、歌でもなく本でもなく、特定のジャンルではなく、ことばの表現ができたらいいなって思います。

本当に自分にとっては、ことばを考えている最中が一番楽しいんだよね。ホント快感なんです。人それぞれ快感が味わえるものってあると思うんだけどね。でもそういった快感って、人間にとってとても大切なものだと思います。だからその快感をこの先も変わらず味わっていきたいなと思います。

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ことばの快感か。

一倉さんは心の底からことばが好きなんだな、と思う。「ことばの快感」を本当に知っているからこそ、相手に届くことばを贈ることができるのではないだろうか。

ことばには疎い僕だが、一倉さんのいわれる「快感」を今後味わう事ができたら嬉しい。果てしない、底なしの感動を求めて、ことばともっと触れ合ってみようと思う。

一倉さんはもう究極をいっている、

「ことばになりたい」

って。それってすごい。

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一倉 宏 (イチクラ ヒロシ)       

1955年、群馬県生まれ。コピーライター。78年、サントリー株式会社に入社。90年より独立して事務所を設立。広告コピーの代表作として、サントリー・モルツ「うまいんだな、これがっ」、ソニー・ウォークマン「哲学するサル篇」、松下電工「きれいなおねえさんは好きですか」など。齋藤和義の「ウェディングソング」など、作詞家としてもミュージシャンに作品を提供している。

http://www.1-kura.com/
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2010年06月08日

『能音楽入門』終了

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第4回にわたって行なわれた、ウラハラ藝大研究室『能カフェ』、青木涼子さんの『能音楽入門』は無事終了致しました。

たくさんの方にお越しいただき誠にありがとうございました。今回参加できなかった方は次回の講座に乞うご期待です!

今回の講座の詳しい様子は、青木涼子さんのHPをご覧ください。

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能の舞・講座の写真より。青木涼子さんには、ウラ藝開校当初より様々な『能』に関する講座を行なっていただいております。
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